日記 2024.7.20
今日は普通の日記です。
朝起きて酷暑のなかウォーキング。ダイエットである。自分にしてはがんばっている。
なぜがんばれているのかというと、僕のメモアプリの一番上にこのような言葉が書かれているからだ。
「有酸素運動にはもっと大事な何かがあるはずだ。これは僕にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ。酷寒の朝に、酷暑の昼に、身体がだるくて気持ちが乗らないような時に」
これは村上春樹さんの言葉である。
作家の言葉はこのように人に力を与え、人を動かす原動力になる。
歩きながら、三作目のメモを取る。そしてこのサイト用の短篇のことを考え、四作目のことも考える。
僕のアイデアはいつも大体歩いている時かシャワーを浴びている時に出てくる。考えて考えて集中している時よりも、無になっている時の方がぽろっと出てくることが多い。それはやっぱり小説の舞台が彼岸にあるからだろう。この世とあの世、夢とうつつ、僕は向こうに至る獣道を知っているし、その歩き方も知っている。歩いていないと獣道は雑草で隠れてしまう。そうならないように、時々歩いておく。三作目、四作目、五作目の世界への道。
アイデアが出てくる、なんておこがましい。ただ見学させてもらってるだけのくせに。
歩いてシャワーを浴びて、今から読書するか、YouTube有料コンテンツの宮本輝さんのロングインタビュー動画でも見るか。宮本輝さん、なんて。宮本先生と呼ぶべきだろうおまえは。その辺の事情もいつかどこかで書く。
読書は徳島文學の北迫薫さんの岬シリーズか、玄月さんの長篇を。なんと北迫さんに一週間後にリズールにお呼ばれしているのだ! 昔から何度も行こうと思って、尻込みして、勇気が出なかったバーである。デビューして良かったなあと思う。僕酒飲めないんですよ。バーなんてとんでもないですよ。でも誘われたんだから胸を張って行ってきます。
と思っていたら、ちがう、先にホームセンターに行かねば。
みかんの木と庭の植木たちのカミキリムシ対策のために、展着剤と噴霧器を買いに行かないといけないのだった。トラサイドA、ジマンダイセン、アビオンE、アドマイヤーフロアブル。農薬の名前はちょっとかっこいい。
うちの庭は90坪くらいあるのでメンテが大変。
と書いてる途中で、壁のポスターが扇風機の風でめくれ、剥がれて傾いた。
貼り直そうにも、もう四隅がボロボロである。
日付を見ると2006年。ワオ、もうそんなに前になるのか。兵庫県立美術館で見た「アルベルト・ジャコメッティ展 矢内原伊作とともに」。
僕はべつにジャコメッティに興味はなかったけれど、適当に展示を流し見していって、ふと一つの彫刻が目に留まり、直後、30歳の僕ははらはらと泣いてしまったのだ。
それはジャコメッティの代表作だった。
展示は制作順に見ていけるよう構成されていたから、彼がどんな過程を経てそこに至ったのかが分かる。
作品は、どんどん削れて、削れて、細くなっていった。
よくぞここまで、と思った。
よくぞここまで耐え忍んだ。
不思議なもので、それから18年経ち、僕は逆に人からそう思われるような状況になってしまっている。
でも本人にしてみれば、当たり前のことを普通にやってきただけかもしれない。泣いたのは僕の勝手な感傷であったようにも思う。
ただ、あの彫像を思い返してみると、やはりあれが彼の代表作だ。
僕はまだ代表作を書けていない。
だからこのポスターは剥がさない。なんとかして貼り直そう。